会社員の場合、所得税などの税金は会社が給料から天引きして納めてくれます。
しかし、フリーランスになると自分で納税金額を計算してから申告しなければいけません。
納税をするときは、なるべく負担する金額を抑えたいものです。
ただし、間違った方法で計算をすると必要以上に支払ってしまうことがあります。
この記事では、
- フリーランスになったけど、いくら税金を納めるべきかわからない
- 税金の支払いが厳しい
- なるべく納税金額を減らしたい
というような人に向けて、フリーランスが納税するときに知っておきたい節税対策について説明します。
フリーランスが納める税金
フリーランスが払わなければいけない税金は次の4種類です。
- 所得税
- 住民税
- 個人事業税
- 消費税
節税するためには、この4つの税金についてしっかり理解していることが重要です。
所得税
フリーランスの個人事業主が一番苦戦するのが、この所得税だと思います。
所得税は、毎年1月1日から12月31日までの1年間で稼いだ所得に応じて課せられる税金です。
所得とは、事業によって稼いだ収入から必要経費を差し引いた額を言います。
所得の額が多い人ほど、所得に対する税率も上がる累進課税です。
所得税の計算は下の表を用いて計算します。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円 〜 1,949,000円 | 5% | 0円 |
1,950,000円 〜 3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 〜 6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 〜 8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 〜 17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 〜 39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 〜 | 45% | 4,796,000円 |
「4,000万円稼いだら45%の1,800万円も支払わないといけないの?」と勘違いされる人がいますがこれは間違いです。
所得税の税率は、課税される所得金額の部分に対する税金で、4,000万円以上稼いだ人でも1,000円〜1,949,000円までの税率は5%で計算します。
ただ、いちいちそれぞれの所得金額の部分を足し合わせて計算するのは面倒なので、所得の額ごとに控除額が決められています。
所得税の計算方法は、「所得金額×税率-控除額」です。
例えば、課税される所得が1000万円の人の場合、次のようになります。
10,000,000円×0.33 – 1,536,000円= 1,764,000円
これに加えて、2037年までは復興特別所得税(基準所得税額に2.1%の税率を掛けた額)を併せて納付する必要があります。
所得税は、翌年の2月16日から3月15日の間に確定申告を行なって国に納付します。
住民税
住民税は、所得額に応じて都道府県・市区町村に対して納める税金です。
個人の県民税や市区町村税をあわせて、総じて「個人住民税」と言います。
確定申告で申告した課税所得をもとに計算されたものが、市町村から納付書として届きます。
所得に対する住民税の税率は一定で、都道府県が4%、市町村が6%の計10%です。
納付は年4回(6月、8月、10月、1月)の分割払いのほか、6月に一括で払うこともできます。
所得税の納付期間と異なるので注意してください。
個人事業税
個人事業税は、事業所得が年間290万円を超えた事業者に課される税金です。
事業所得が290万円以下の場合、支払う義務はありません。
業種によって負担する税率が異なるのが特徴です。
また、課税対象にならない業種も存在します。
所得税の確定申告をしたら都道府県から納税通知書が届くので、それに従い8月と11月の2回に分けて納付します。
消費税
消費税は、商品やサービスを購入するときに課される税金です。
消費税を負担するのは消費者ですが、納付は事業者がおこないます。
消費税には、課税事業者と免税事業者があります。
課税事業者に該当するのは、前々年度の売上が1,000万円、あるいは前年度の1月から6月までの売上が1,000万円を超える事業者です。
課税事業者は、消費税を納める必要があります。
売上が1,000万円を超えない方は免税事業者にあたりますが、消費税を納めなければならない場合もあります。
インボイス制度に対応して適格請求書発行事業者の登録申請をした事業主は、すべて消費税を納めなければいけません。
フリーランスが適格請求書を発行できない場合、取引先は仕入税額控除が受けられなくなり納税負担が増えます。
インボイスに対応することは任意なので、取引先の状況を考えてから検討しましょう。
フリーランスにおすすめの節税対策
フリーランスの個人事業主が節税をするために抑えるべきポイントは、経費と控除です。
所得税や住民税、個人事業税は所得金額に応じて納められます。
所得は収入から経費と控除を差し引いたものです。
経費と控除を多く計上することで、所得金額を減らすことができます。
所得金額を減らす重要なポイントは以下のとおりです。
- 経費を漏らさず計上する
- 家事按分を活用する
- 利用できる控除を把握する
- 青色申告控除を利用する
- 所得控除になるものを利用する
それぞれ具体的な方法を含めて解説します。
経費を漏らさず計上する
事業に必要な費用は、経費として計上することができます。
経費を多く計上できれば、所得金額を減らすことが可能です。
よく経費として計上されるものを一覧で紹介します。
勘定科目 | 項目 |
消耗品費 | 文房具・パソコン・ソフトウェア・オフィスで使う事務用品 |
減価償却費 | 10万円以上かつ1年以上使用可能な固定資産(パソコン、建物、自動車) |
旅費交通費 | 新幹線代、電車代、バス代、タクシー代、宿泊代 |
通信費 | 郵便、携帯電話、インターネット代、クラウドの会計ソフトやデザインソフト |
地代家賃 | 事務所などの家賃や使用料 |
水道光熱費 | 事務所の電気代、ガス代、水道代 |
新聞図書費 | 事業に関係のある書籍や雑誌、新聞 |
広告宣伝費 | ネット広告代、チラシ代、雑誌掲載代、求人広告代 |
外注費 | 人材派遣料 |
交際費 | 仕事に関わる人たちとの食事代 |
会議費 | カフェでの打ち合わせ |
租税公課 | 固定資産税、自動車税、登録免許税、印紙税、不動産取得税 |
雑費 | 他の経費にあてはまらないもの |
少しでも仕事に必要になったものは、すべて経費の対象になります。
ただ、経費は事業に使ったものの費用である必要があり、プライベートでのみ使用したものは経費にはなりません。
経費になるものを購入したら、証拠のため仕事に関係のある領収書やレシートは必ず保管してください。
領収書など商品の購入を記録したものがなければ、確定申告のときに経費として認められません。
家事按分を活用する
プライベートのみで使用したものに関しては経費計上できませんが、仕事とプライベートどちらでも使うものは経費計上が可能です。
パソコンを仕事で4時間、プライベートで6時間使う場合、パソコン代の4割を経費として計上できます。
仕事で利用している割合に応じて経費計上することを「家事按分」と言います。
家事按分は、自宅を事務所としている場合でも可能です。
8時間家で作業する場合、家賃の3割ほどを経費計上できます。
また、家の半分の面積を事務所としている場合、家賃の半額を経費計上できます。
家賃の他にも、水道光熱費、携帯電話代、ネット料金、固定資産税についても家事按分が可能です。
利用できる控除を把握する
確定申告では、事業に関係なくとも、最低限の生活を保障するための控除額を所得金額から差し引くことができます。
下記の表を見て、控除の条件に当てはまる項目がある場合、所得控除として事業所得から差し引くことができます。
種類 | 概要 |
基礎控除 | 納税者本人の合計所得金額に応じて、最大48万円の控除 |
医療費控除 | 支払った医療費が年間10万円を超えるとき、10万円を超えた部分の控除 |
扶養控除 | 一定の所得以下の子供や親、親族を養っている場合に受けられる(年齢によって控除額が変わる) |
配偶者控除 | 一定の収入以下の配偶者がいる場合、最大で38万円の配偶者控除 |
配偶者特別控除 | 自身の合計所得金額が1,000万円以下で、配偶者の合計所得金額が38万円以上76万円未満の場合適用 |
勤労学生控除 | 納税者が学生の場合、一定の金額の控除 |
寡婦控除 | 配偶者と死別している寡婦の場合、27万円の控除 |
ひとり親控除(寡夫控除) | 納税者本人が、合計所得金額500万円以下の単身者で同一生計の子を扶養している場合、35万円の控除 |
雑損控除 | 災害や盗難、横領により損害があったとき、被害額の控除 |
社会保険料控除 | 健康保険料や国民健康保険料、介護保険料、国民年金保険料などの支払額の控除 |
小規模企業共済等掛金控除 | 小規模企業共済などの掛金の控除 |
生命保険料控除 | 民間企業の生命保険や民間個人年金の支払額の、2万円以下から4万円の控除 |
地震保険料控除 | 地震による損害部分の保険料や掛金を支払った場合、最大5万円の控除 |
寄附金控除 | 国に対する寄附金やふるさと納税などに受ける控除 |
青色申告控除を利用する
個人事業主が確定申告をするとき、「青色申告」と「白色申告」の2種類の方法があります。
青色申告の方が必要な書類が多く複雑ですが、最大65万円の特別控除が受けられます。
青色申告を利用するためには「開業届」と「青色申告承認申請書」を税務署に提出しなければいけません。
確定申告の際には複式簿記で記帳し、貸借対照表や損益計算書を用意する必要があり初心者には難しいです。
初めて青色申告で確定申告する方にはクラウド会計ソフトの『マネーフォワード』がおすすめです。
利用に月980円必要ですが、税金に対する知識がなくても比較的簡単に帳簿をつけることができます。
確定申告をすべて一人でおこなうのは、かなり時間がかかり、ミスも起きやすいです。
マネーフォワードにクレジットカードなどを連携させると、自動で仕訳をおこなうので作業が必要ありません。
利用料金も経費になるので、かなりお得です。
所得控除になるものを利用する
青色申告のほかにも、所得控除になるものがあります。
特に利用してもらいたいのが次の3つです。
- iDeCo(個人型確定拠出年金)
- 小規模企業共済
- ふるさと納税
iDeCo(個人型確定拠出年金)
国民年金などの公的年金とは別に積立をおこなえる私的年金制度。
掛金の額や運用方法は自分で選べ、掛金の下限は月5,000円、上限は月68,000円です。
掛金は全額所得控除で、利息や運用費も非課税となります。
小規模企業共済
個人事業主の退職金のような制度。
掛金は月1,000円から70,000万円までで、500円単位で設定できます。
掛金は全額所得控除になり、退職時に共済金を受け取ることが可能です。
ふるさと納税
任意で選んだ地方自治体に対して納税し、翌年の所得税と住民税の一部を控除する制度。
寄付した額から2,000円を引いた額について、所得税の還付や住民税の控除を受けられます。
また、納税した自治体から返礼品が送られてきます。
どこの自治体にするか選べるので、欲しい返礼品がある地域や災害のあった地域などにも納税が可能です。
確定申告にはクラウド会計ソフト
控除の額が大きいので必ずやって欲しいのが青色申告での確定申告です。
クラウド会計ソフトがあれば、簿記や会計の知識がなくても確定申告ができます。
確定申告に必要な確定申告書や青色申告決算書などの複雑な書類を、家にいながら作成してもらえます。
料金は月900円から3,000円ほどかかりますが、税理士を雇うと考えるとかなりお得です。
おすすめのクラウド確定申告ソフトは次の2つ。
- freee
- マネーフォワードクラウド確定申告
インバウンドに対応する予定のない免税事業者には、freeeをおすすめします。
freeeは初心者向けの会計ソフトで、会計の知識がなくても理解しやすい設計です。
ただ、課税事業者の場合、月3,000円ほどかかるのでご注意ください。
将来的に課税事業者になることを検討している方には、マネーフォワードをおすすめします。
マネーフォワードは課税事業者でも月1,280円しかかかりません。
1年間使うだけで、freeeより2万円以上お得です。
初心者には少し難しい設計ですが、ネットで調べたらすぐに使えるようになります。
まとめ
フリーランスの節税で重要なのは、経費と控除の見直しです。
経費と控除を増やして所得を減らすことで、所得税や住民税などを減額できます。
ただ、無理に節税するために経費を使いすぎると、事業や生活が苦しくなります。
バランスを考えて無理のない範囲で節税するようにしましょう。